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幼少期,私は猫の額ほどしか平野がなく海も山も手が届くような田舎で育ちました.夏は生家の裏浜で毎日泳ぎに明け暮れ,春と秋は祖母に連れられ山菜やキノコ狩りを楽しみました.蚊にもたびたび刺されましたが,赤く腫れても翌日にはその痕跡がわずかに残る程度でした.また,春先に杉林へも頻回に入りましたがスギ花粉のアレルギー症状が出るでもなく,今思うと幸せな幼少期でした.大人になり東京にある現在の病院へ就職してからのことです.休日に故郷の浜辺を思い出し海が見たくなった私は,伊豆の浜へ出掛けた折,蚊に刺されました.田舎で蚊に刺されたときとは異なり,赤く大きく腫れ上がり熱をもち,シコリになったままなかなか治らず,ついには皮膚科のお世話になる始末でした.それが私の痛痒いアレルギー疾患デビューです.その後,スギ花粉による「スギ花粉症」デビューもし,今では毎年2月になると「そろそろ花粉症の季節がやって来ますね,去年よりいい薬が出ていれば嬉しいのですが何か情報はありますか」などとスギ花粉症仲間に問いかけています.実は昔,スギ花粉症デビュー直後に,皮下注射による減感作療法にチャレンジしたことがあります.しかし,残念なことに体が抵抗し途中であきらめた経験があります.そんなこんなで,今月号の特集の1つ,“Ⅰ型アレルギーを極める”は,私にとっても身近なテーマを取り上げました.Ⅰ型アレルギーの機序にはじまり,診療の最近の動向,試薬や検査,バイオマーカーの話まで丁寧に解説してあります.特に,Ⅰ型アレルギー診療の最近の動向についての鈴川真穂先生のご論文で取り上げられた,わが国において初めてスギ花粉症を対象とした舌下免疫療法が承認される見通しであるという朗報には多くの読者が目をとどめたと思われます.
一方,今月のもう1つの特集,“JSCC勧告法は磐石か?─課題と展望”については,誰でも中高年になると重大関心事になる「メタボ健診」を例に標準化が必要だった理由と標準化をいかにして進めてきたかを,歴史を踏まえて知っていただけるようになっています.そのうえで,各種酵素項目,糖・糖関連,血液ガス・電解質,含窒素項目,血漿蛋白,脂質項目など,各種項目ごとに現状と今後の課題や展望をまとめてあります.読者の皆さまには,臨床検査の標準化先進国であるわが国が将来にむけ,さらなる改善を行うヒントをくみ取っていただけることを願います.
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