異常値をひもとく・7
劇症型Wilson病に認められた低ALP血症
星野 忠
1
1日本大学医学部病態病理学系臨床検査医学分野
pp.791-797
発行日 2013年7月15日
Published Date 2013/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542103477
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はじめに
臨床検査データを日々チェックしていく中で,時として極端な異常値を示すデータに遭遇することがある.このとき,臨床検査の担当者として何を考え,その後どのようなアクションを起こすかで,この異常値の運命は決まってくる.①日常検査に忙殺されてそのまま放置されるもの,②解析を試みたがその原因は不明のままのもの,③首尾よく原因が解明されたもの.この中で,①,②に相当するものは全体の95%以上あると推測される.
今回提示する症例は,12歳,男性でアルカリホスファターゼ(alkaline phosphatase;ALP)活性が9U/Lと高度に低値を示した例である.なお,筆者は約1年前に本症例と全く同じALP活性が高度に低値であった症例(14歳,女性でALP活性が10U/L,臨床診断名は劇症型Wilson病で,入院後約4カ月で死亡)を経験しているが,このときはALP活性低値の原因を解明することができなかった.1年以内に再び同様の症例に遭遇する機会はめったになく,何か運命的なものを感じ,今度こそはという思いをもってALP活性低値の原因究明に取り組んだプロセスを紹介する.
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