けんさアラカルト
インフルエンザと高ALP血症
前川 真人
1
1浜松医科大学臨床検査医学講座
pp.1226
発行日 2000年9月1日
Published Date 2000/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543905602
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毎年冬になるとインフルエンザが流行し,予防注射やワクチン,また最近では診断キットが発売されるようになったり治療薬も開発されたり,たくさんの話題を提供してくれている.インフルエンザは,オルソミクソウイルス科に属するウイルスによって鼻咽頭粘膜から飛沫感染する呼吸器感染症である.症状としては,高熱,咳・鼻汁などの呼吸器症状,下痢・嘔吐・腹痛などの消化器症状,筋炎などが一般的である.しかし,このウイルスがふつうの風邪と違うところは,小児や高齢者で死亡者が多発することである.小児では急性の脳炎・脳症が報省されている.
インフルエンザで,特に肝機能障害などは高齢者においても病理学的に示されていないようであるが,重度の肝疾患患者がインフルエンザに罹患したとき,肝機能が悪化し,非代償性となったという報告が見られる1).腹水,肝性脳症,末梢性浮腫,急性の肝細胞障害をきたしたと記載されている.すなわち,肝機能障害を有する患者がインフルエンザに罹患すると,高ALP血症を呈することは十分考えられる.また,動物実験による結果であるが,インフルエンザ感染をネズミに起こさせたときに脂質過酸化物の増加が見られ,酸化ストレスの亢進が認められたという報告がある2).これは,ビタミンE投与によって量依存的に抑制されている.インフルエンザによる肝機能悪化の原因の1つとして考えられるかもしれない.
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