映画に学ぶ疾患
「レスラー」―ボクサー脳
安東 由喜雄
1
1熊本大学大学院医学薬学研究部病態情報解析学分野
pp.84
発行日 2010年1月15日
Published Date 2010/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542102222
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人生とは,居場所,死に場所を求める営みであると言えなくもないが,年齢を重ねるごとにこのことが重要になっていく.人は若い頃に一生懸命しっかりとした仕事をして良い人間関係を構築しておかないと後にひどいつけがやってくる.体力,気力,そして知力が衰えてきたとき,頼りになるのは経験,感性,友人,家族など限られたものになるからだ.映画「レスラー」を見ていてそんなことを考えた.
ランディ(ミッキー・ローク)は,かつては人気レスラーで,ザ・ラムのニックネームを持ち,血の気の多いプロレスファンの心を釘づけにしていた時期がある.20年前は,マディソン・スクエア・ガーデンでの興行でスタジアムを一杯にした.プロレスはショウであることに間違いはないが,技に切れや威圧感がなければプロレスファンを引きつけることはできない.体を張って生きるプロスポーツ選手の宿命ではあるが,年老いたランディは地元でどさ回り興行をしながら,試合のない時はアルバイトして日銭を稼ぐ生活だ.人は貧すれば鈍する.若いころからの不摂生も祟り,ある日のプロレス興行の後,突然気分が悪くなった後,意識不明となり,救急車で病院に運ばれる.心筋梗塞らしい.バイパス手術を受けて九死に一生を得たランディであったが,二度とリングには上がれない体になっていた.
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