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医療における質の高い感染制御への取り組みは,患者サービス向上のみならず医療経済学的な観点や病院経営健全化の観点からも極めて重要な課題である.近年の感染制御はエビデンスに基づく感染対策と効果検証が不可欠であり,医療関連の感染制御の実践に際し,医師,看護師,薬剤師,臨床検査技師,事務職を含めた医療従事者が総力を結集する取り組みが求められている.わが国の多くの医療機関では,院内感染対策委員会および実働部隊としてのインフェクション・コントロール・チーム(Infection Control Team;ICT)が組織化され活動しているが,こうした委員会や組織が機能を発揮するためには,感染制御に関する職域毎の専門的な知識・技能を有する人材の育成と相互の協力が不可欠である.
近年,感染制御に携わる医療従事者の分野ごとに資格制度が制定され,急速に普及しつつある.1999年に発足したICD制度協議会によるインフェクション・コントロール・ドクター(Infection Control Doctor;ICD),2000年に発足した日本看護師協会による日本看護協会認定感染管理認定看護師(Infection Control Nurse;ICN),2005年に発足した日本病院薬剤師会による感染制御専門薬剤師(Board Certified Infection Control Pharmacy Specialist;BCICPS)に加えて,日本臨床微生物学会では,2006年1月より感染制御認定臨床微生物検査技師(Infection Control Microbiological Technologist;ICMT)制度を発足させ,専門的な知識・技能を持った認定臨床微生物検査技師の育成と感染制御活動への貢献を図っている.この制度は,認定臨床微生物検査技師制度協議会(日本臨床微生物学会,日本臨床衛生検査技師会,日本臨床検査医学会,日本臨床検査同学院)が,「臨床微生物学と感染症検査法の進歩に呼応し,これらに関連する臨床検査の健全な発展普及を促し,有能な認定臨床微生物検査技師の育成を図り,より良質な医療を国民に提供すること」を目的として発足させた認定臨床微生物検査技師制度を土台として作られた制度で,医療関連施設内の感染制御に実務的に積極的に取り組んでいる認定臨床微生物検査技師のうち必要条件を満たした者を,医療関連施設における感染制御に強くかかわる臨床微生物検査技師であるとして位置づけ,認定するものである.ICMT資格制度の制定により,各医療関連施設における認定臨床微生物検査技師の認知度を高めるとともに,ICD, ICNおよびBCICPSと協調し,ICMTの資格を持った検査技師一人一人が,より質の高い効率的な感染制御を実践する責務を果たすことが期待されている.
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