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尿路感染症は腎臓から尿道に至る尿路に起きる感染症の総称で,上部尿路感染症である腎盂腎炎,下部尿路感染症である膀胱炎,尿道炎,前立腺炎,精巣上体炎などがある.下部尿路感染症においては,性行為感染症(sexually transmitted disease;STD)としての位置づけも重要である.多くの場合,尿路感染症は上行性感染,すなわち外陰部の細菌が尿道に侵入し,膀胱,尿管,腎盂と上行性に侵入して感染が成立する形を取り,血行性感染により起きることは少ない.一方,新生児や高齢者では尿路感染症がフォーカスとなり,いわゆるurosepsisの形で敗血症に進展する場合も多く,特に高齢者では救命救急センターに敗血症性ショックで運び込まれる症例の中で一定の割合を占めている.これらの症例の中には手遅れとなり救命できないケースも多々あることから,早期発見・早期治療が重要である.また小児の尿路感染症においては,膀胱尿管逆流に代表される尿流障害を伴っている場合が多く,気づかずに放置しておくと感染を反復して腎実質の不可逆的な障害をきたし,末期腎不全に陥る場合もあるので,やはり早期に的確に診断し,早期治療を行うとともに,尿流障害の有無や腎実質の変化の有無について画像診断などを用いて診断することが重要となる.STDについては,感染を放置すればパートナーを感染させることはもちろん,パートナーを介してさらに社会に広がる可能性が高いこと,感染者自身の不妊に繋がる可能性があることなどから,早期診断と早期治療は社会的な重要性を含んでいる.また性交渉の低年齢化に伴い,STDに感染する年齢も低年齢化しており,小学校高学年から高校生にかけての児童・生徒や,保護者,教職員に対する教育活動を通して,STDに関する正しい知識を普及し,STDの感染を予防することも重要な問題である.そのためにも,やはり簡便で精度の高い診断法の普及が重要となる.
尿路感染症の診断は,従来から尿を用いた一般検尿および尿培養により行われており,現在においても本質的にその方法に変化はないが,診断のための標準的な基準作りが,泌尿器科領域を中心に行われている.また一方では,遺伝子診断などを利用した迅速診断検査も,STDを含む尿路感染症の診断に一般検査室レベルで導入されるようになってきた.今月号では,尿路感染症の診断に焦点を当てて,各分野の専門家の先生方から,従来から行われている検査方法の有用性の再確認と標準化の問題,比較的最近行われるようになった迅速診断法,遺伝子診断法などの検査の特徴と意義,尿路感染症の診断に必要な画像診断の実際と診断的意義について解説していただくことにした.また診断・治療・管理面で成人とは異なる点のある小児の尿路感染症については,小児泌尿器科の立場から項を別にして解説していただいた.
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