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太陽系の構成元素は約90%が水素(H),9%がヘリウム(He)で,その他の元素は1%に過ぎないそうだ.しかも,その他の1%の元素の大部分は原子番号27番までの元素だという.ちなみに,太陽は約99%が水素で構成されている.したがって,太陽系の中にあって地球は稀少元素の占める割合が随分多いことになる.その地球も,全体をみた場合と私たちの生活に関係の深い大気を含む地表面付近に限ってみた場合とでは,構成元素の割合が大きく異なるという.地表面に存在する生物を代表して私たち人間,すなわち人体を構成する元素の割合も生活環境とは大きく異なっている.太陽系にとっての地球,地球にとっての人間(人体),それぞれの占める割合は極めて小さな部分である.さて,本特集のテーマである微量元素はまさに人体にとってはケシ粒ほどの部分に過ぎない.全微量元素を合計しても人体を構成する元素の1%(重量比)にも満たない成分である.しかし,その生理学的機能を考えると太陽系の中で青く美しく輝く地球,あるいは地球上で暮らす私たちと何か通ずるものがあるようにも思えてくる.
微量元素と聞くと,何年か前に学術領域だけでなく巷でも話題になったアルミニウム(Al)とアルツハイマー病の関係が思い出される.アルツハイマー病患者の脳からアルミニウムが検出されたことや,アルミニウムが体内に多量に取り込まれると認知症状を生じるといった報告,また,アルミニウムが脳血液関門を通過するメカニズムに関する報告などが新聞などで紹介されたことが引き金になっている.一時,アルミ鍋や缶ビールの売り上げが減少したといったニュースがあったようにも記憶している.こんな騒ぎは困るが,微量元素の研究が発展する一つの機会になったとすればその点では幸いである.
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