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1.はじめに
頭部,特に耳後部に弱い電気刺激(galvanic stimulation)を加えると電気性身体動揺(galvanic body sway)が起こる.さらに電流を強くすると電気性眼振(galvanic nystagmus;GN)が起こる.その発生機序については,末梢前庭器や前庭神経であるといわれているが,電気刺激が前庭系のどこに働いて,眼振や身体動揺が誘発されているか決定的な説はない1~4).
この理由として,眼球運動を記録する場合,ENG(electronystagmography)では,刺激電流がノイズとして記録に混入してしまうため眼球運動速度の定量的な解析が困難であったことが挙げられる.
この問題を解決しGN検査を他の眼振検査と同様に広く臨床的に利用するために,近年開発された赤外線CCDカメラとコンピューターによる眼球運動記録装置(video-oculography)を用いてGNの解析を行えば,電気刺激と眼球運動の関係がより明解となると考えられるので,以下の三つの実験を計画施行した.
健常人における電気刺激による前庭系の生理的反応を明らかにする目的で,①健常人のGNの解発閾値,電流の強さと眼振頻度の関係,電流の強さと平均緩徐相速度の関係につき検討した5).
GN解発の電流が作用する器官を考察する目的で,②末梢前庭系が作用部位であると仮定して,内リンパ水腫による半規管および前庭機能障害であるメニエール病(Meniere disease;MD)のGNを記録解析した6).さらに,前庭神経の関与を明らかにする目的で,③前庭神経障害である聴神経腫瘍症例(acoustic nerve tumor;AT)のGNを記録解析し,健常人のGNと比較した.
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