今月の主題 平衡機能検査
平衡機能の検査
2.耳石機能検査―2) 傾斜知覚検査
落合 敦
1
,
加我 君孝
2
Atsushi OCHIAI
1
,
Kimitaka KAGA
2
1大和市立病院耳鼻咽喉科
2国立病院機構東京医療センター・感覚器センター
キーワード:
傾斜知覚
,
電動ゴニオメーター
Keyword:
傾斜知覚
,
電動ゴニオメーター
pp.1425-1429
発行日 2008年11月15日
Published Date 2008/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542101811
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傾斜知覚検査は空間識検査の一つであり,耳石器検査に分類される.空間識のうち,重力に対する傾斜知覚の測定は1922年Graheにより初めてなされたが,その方法は極めて古典的なものであった.現在,われわれは電動ゴニオメーターを改良し傾斜台上に椅子を設置し座位における傾斜知覚を検査している.
われわれの自験データより,片側前庭機能障害群,両側前庭機能障害群の両群ともコントロール群との間に有意差を認めなかったことから,体性感覚入力が優位に働いていることにほかならず,感覚脱失を呈していた多発性硬化症例がこのことを示唆していた.そして,健常老人群とコントロール群との間に有意差を認めたことから,前庭入力の低下を補って優位に働いていた体性感覚入力自体の機能低下と前庭入力,視覚入力,体性感覚入力を統合する中枢神経系の機能低下の両者によって高齢者の傾斜知覚は低下すると考えられた.したがって本検査は,平衡機能検査だけでなく加齢による認知能力の低下や脳神経疾患による感覚脱失重症度の評価のための補助的検査としても活用されることを推奨したい.
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