特集 ホルモンの病態異常と臨床検査
コラム
副腎再生
岡部 泰二郎
1
,
柳瀬 敏彦
1
,
高栁 涼一
1
1九州大学大学院医学研究院病態制御内科
pp.1247
発行日 2008年10月30日
Published Date 2008/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542101786
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副腎,性腺の発生,分化に必須の転写因子としてAd4BP/SF-1が知られている.われわれは骨髄の間葉系幹細胞にAd4BP/SF-1を強制発現させることによりステロイド産生細胞に分化させることができることを見いだした1).権藤が,マウスの骨髄由来の細胞を造血幹細胞の長期培養系であるDexter culture下で長期間,付着細胞のみを培養することにより,多分化能をもつ間葉系幹細胞様の細胞を濃縮できることを見いだしたことがこの発見の端緒になった.組織幹細胞である間葉系幹細胞と異なり,ES細胞においてAd4BP/SF-1を強制発現させても同様な現象は認められず,レチノイン酸またはcAMPを介した刺激下に,ごく一部のステロイド産生が誘導されるのみである.このことは,間葉系幹細胞がステロイド産生細胞に分化しやすいことを示しているのかもしれない.牛の副腎に副腎皮質の幹細胞が存在することを報告した研究はあるものの,われわれと同様な研究は世界的にみても皆無であり,唯一,宮本らのグループが報告しているのみである2).
ステロイド産生細胞の再生などしなくてもステロイド薬を服用すればよいではないかと考えられる読者も多いと思われるが,ステロイド産生細胞をin vivoで投与することができれば,生体内の内分泌的な調節下にステロイド産生を行うことが可能になりうるため,意義は大きいと思われる.われわれはマウスのみでなくヒトの細胞系でも3),また骨髄のみでなく脂肪組織由来の間葉系幹細胞からも同様な現象を観察している.
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