- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
分子生物学の発展に伴って,遺伝子や蛋白質の発現と機能が疾患の病態生理と密接にかかわっていることが次々と明らかにされている.特にゲノム情報が明らかにされた現在では,実際の機能発現を担っている蛋白質の量的・質的な情報が不可欠となっている.しかし,蛋白質は個々で機能するものではなく,複雑かつ精緻なネットワークによって制御されており,機能的な集合体として取り扱うことが必要である.このようにその系に存在する蛋白質を包括的に解析することをプロテオミクスと言い,生命現象を理解するための重要な方法論となっている1~3).
しかし,蛋白質はその発現量自体が時間的・空間的に変化し,しかもその間,多くの蛋白質はリン酸化やメチル化,あるいは糖鎖付加など様々な修飾を受ける.またホルモンレセプターなどではリガンド分子との結合によって構造変化し,コファクターなどと複合体を形成することが知られている.このようにプロテオミクスは,蛋白質の量的変化,機能的変化,構造的変化,そして相互作用,さらに蛋白質全体のネットワークの解析など極めて広範囲なカテゴリーを含んでおり,その解析には技術的課題も多い.
個々の蛋白質については,目的に応じてこれまで様々な発現・機能解析法が開発されているが,プロテオミクスにおいてはこれらの情報を包括的に検出・解析する技術が必要となる.特に,少量のサンプルから多種類の蛋白質を効率よく分析するためには,分析機器の小型化・ハイスループット化が不可欠となる4).プロテインチップは微小基板上に,蛋白質を分離・同定する機構を集積化したデバイスシステムの総称であり,プロテオミクスの有力なツールとして様々なタイプが開発されている.
Copyright © 2008, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.