今月の主題 アスベストと中皮腫
話題
アスベストの近隣曝露による中皮腫の発生
車谷 典男
1
,
熊谷 信二
2
Norio KURUMATANI
1
,
Shinji KUMAGAI
2
1奈良県立医科大学地域健康医学教室
2大阪府立公衆衛生研究所生活環境部
キーワード:
中皮腫
,
青石綿
,
近隣曝露
Keyword:
中皮腫
,
青石綿
,
近隣曝露
pp.1028-1032
発行日 2008年9月15日
Published Date 2008/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542101697
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1.はじめに
石綿(アスベスト)の曝露経路の一つに近隣曝露がある.環境対策が不十分であれば,石綿企業は大気を汚染して近隣曝露を生じ,40年前後の潜伏期間を経て,周辺住民に中皮腫を発生させることになる.
わが国の石綿使用量は1960年代に入って急速に増加し,1990年前後まで年平均20万トンを上回っているが,今それらに対応する潜伏期間が“順次”終了していく局面にある.そうしたなかで,尼崎市にあった旧石綿セメント管製造工場の近隣住民に証明された中皮腫の集積1)は,衝撃的な規模であったことに加え,同様な事例がほかにも発生している可能性と今後も発生する可能性を物語る公害事件として,わが国の社会に動揺をもたらした.
本稿では,筆者らの経験事例1)も含めて,内外の疫学研究(表1)をもとに,近隣曝露による中皮腫の知見を紹介する.
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