けんさ質問箱Q&A
アスベストの検査法は?―特に,中皮腫の血清マーカーについて
樋野 興夫
1
1順天堂大学医学部病理学
pp.796-799
発行日 2006年8月1日
Published Date 2006/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543100986
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アスベストを喀痰から簡単に検出できる方法があれば教えてください.また,アスベストは簡易の偏光顕微鏡で観察できるのでしょうか.併せて教えてください.(岐阜市 A.O.生)
はじめに
そもそも汚染された環境を原因とする“がん”に冒されることを専門的には“環境発がん”という.古くは1775年,イギリスの外科医ポットの「煤による刺激によって煙突掃除人に陰囊がんが発生する」という報告に始まる.産業革命に始まる工業化によってわれわれの生活に入り込んだものだ.“文明の凶器”といわれる所以である.本人の意思と関係なく接触を強いられたことに悲劇性がある.これは現在のアスベスト問題でも同様である.これから求められることは,リスク評価に加えてリスクマネージメント,コミュニケーションであろう.どのくらいの期間,どのくらいの量に曝露されれば“がん”になる危険があるのか実は曖昧である.発がんに長い期間(20~30年)要することも曖昧さの一因である.過剰に,逆に過少に恐れることは人間として致しかたない.「曖昧なことは曖昧に答えるのが科学的である」,「正当に怖がることはいかに難しいか」に直面する.予見能力についてプロのなんたるかが問われるときでもある.
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