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Acinetobacter属はacineto=無動性の,bacter=桿菌という意味をもつ,好気性のグラム陰性短桿菌である(図1).大きさは1.0~1.5×1.5~2.5μmであり,生化学的性状としては,カタラーゼ陽性,オキシダーゼ陰性のブドウ糖非発酵菌である.ドリガルスキー改良培地(BTB培地)などでよく発育し,コロニーはスムーズでやや濁った印象があり,ほかの腸内細菌科のコロニーよりもやや小さいコロニー(図2)を形成することが多い1).Acinetobacter spp.は通常,環境や土壌に広く生息し,病院内の環境(人工呼吸器,人工透析器,空調システム,床など)に加えて家庭の洗面台など湿潤な室内環境からも検出され,上気道,消化管,尿路,膣などにも定着するといわれている.したがって,しばしば健常人の皮膚,特に湿った部位である腋窩,会陰部,足趾間などに常在しており,Larsonらの病院職員の手の常在菌に関する報告によると最も多く検出されたグラム陰性菌はAcinetobacter属であったと言われている2).
現在,Acinetobacter属には20以上の種(species)が含まれている3).報告によって若干頻度は異なるものの,臨床材料から最もよく検出されるのはAcinetobacter baumannii(genomic species 2)であり,検出されたAcinetobacter属の約70%を占め,喀痰などの呼吸器由来の検体からの検出が約半数を占める4,5).特に,髄液ではNeisseria meningitidis,喀痰ではHaemophilus influenzaeとの鑑別が重要であると言われている6).
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