今月の主題 胎盤
トピックス
胎盤のIgGサブクラス輸送能
柱 新太郎
1
Shintaro HASHIRA
1
1帝京大学医学部小児科
キーワード:
IgGサブクラス
,
経胎盤輸送
,
母体ワクチン接種
Keyword:
IgGサブクラス
,
経胎盤輸送
,
母体ワクチン接種
pp.1725-1730
発行日 2007年12月15日
Published Date 2007/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542101395
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1.はじめに
胎児血中IgGの大部分は,胎盤を介して母体から輸送される.胎児血中には,妊娠第2三半期の早期から母体由来のIgG増加が認められるものの,その大部分は妊娠第3三半期に輸送される1).正期産で出生した新生児の血清総IgG濃度は,母体のそれよりも高値である.また,免疫グロブリンの中でIgGに選択的に輸送がみられることより,胎盤のIgG受容体を介する輸送機序が考えられてきた.母体血中のIgGが胎児血中に移行するには,胎盤絨毛組織の2つの細胞層,すなわち合胞体性栄養膜(以下,栄養膜と略す)と胎児血管内皮を通過する必要がある.これらの細胞層におけるIgG細胞内輸送には,前者では新生児型Fc受容体(neonatal Fc receptor;FcRn)が関与しており2),後者ではⅡb2型Fcγ受容体(Fcγ receptorⅡb2;FcγRⅡb2)の関与が示唆されている3).胎児に経胎盤移行した母体由来IgGは,免疫学的に未熟な新生児期・乳児早期の感染防御に,重要な役割を果たす.しかし,異常抗体の移行により,溶血,血小板減少,重症筋無力症などの病態が,児に起こりうるという有害な側面も有する.一方,IgGは,そのH鎖定常部の分子構造の違いにより,IgG1,IgG2,IgG3,IgG4の4つのサブクラスに分類され,物理化学的,生物学的性状が異なる.本稿では,IgGサブクラスの経胎盤輸送の特徴と,その臨床的・公衆衛生学的意味を概説する.
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