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1.はじめに
痛風は尿酸塩結晶〔monosodium urate monohydrate(MSU)crystals〕により惹起される代表的な結晶誘発性炎症性疾患である1).痛風では,第一中足趾節関節や足関節などに急性の関節炎が惹起される.障害関節には発赤,腫脹,疼痛などの急性炎症症状が顕著に認められる.痛風の症状は強く,患者は痛みのため歩行困難となり,障害部位に触れるだけでも強い痛みを訴える.一方,痛風性関節炎の症状は一過性であり,多くは治療の有無にかかわらず1~2週間で自然軽快することが臨床的な特徴である.
痛風はヒポクラテスの時代から既に認識されていた古い疾患である.その後の多くの研究は,関節腔内に析出した尿酸塩結晶が好中球浸潤を引き起こし,好中球を介した急性炎症が痛風病態の中心を形成していることを明らかにした.しかし,生体内で析出した尿酸塩結晶が起炎刺激となる機序などはいまだ不明であった.近年の痛風研究の進歩により,痛風の分子病態の詳細が明らかになりつつある.特に,貪食細胞〔マクロファージ(Mφ)や好中球〕が自然免疫機構を介して尿酸塩結晶を認識することにより,急性炎症が惹起されることが明らかにされた.これらの研究成果は,痛風の分子病態の解明のみならず,生体内における尿酸塩結晶の生理的・病態的意義に新たな展望を開くものと考えられる.
痛風の急性炎症病態には,①尿酸塩結晶の組織沈着と関節腔内への脱落,②貪食細胞による尿酸塩結晶の認識,③好中球の浸潤・活性化による急性炎症の発現,④急性炎症の収束の4つの過程が考えられている.本稿では,最近の研究成果に基づいて,これらの炎症過程のメカニズムを概説する.
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