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1.はじめに
ミエロペルオキシダーゼ(myeloperoxidase;MPO)は,主に好中球のみに存在しており,その含有量は細胞の乾燥重量の5%にも達する.単球にもわずかに存在しているが,その他にMPOの存在が認められる組織細胞は知られていない1,2).好中球が不活性化状態のときはアズール顆粒内に貯蔵されている.ヒトのMPO遺伝子は,17番染色体に14kbの単一遺伝子としてコードされており,12個のエキソンから構成される.骨髄における顆粒球の分化の際,前骨髄球と前骨髄単球だけが活発にMPOを発現し,骨髄球の初期段階で発現は停止する.したがって,成熟好中球では,MPO蛋白質は大量に蓄積されているが,遺伝子の発現は停止している.MPOは,まず80kDaの単一ペプチドとして翻訳されたのち,シグナルペプチドが除去され,N-結合型糖鎖が付加して90kDaの不活性なアポプロMPOになる.アポプロMPOは小胞体上でヘムが結合して活性のあるプロMPOとなり,エンドソームまたは顆粒に移行するとプロペプチドが分解された後,59kDaのαサブユニットと14kDaのβサブユニットに切断され,それぞれ2本ずつが結合しておよそ150kDaの成熟型となる3).
活性化した好中球は,食細胞NADPH(nicotinamide adenine dinucleotide phosphate)オキシダーゼ(Nox2)により酸素からスーパーオキシド(O2・-)を,次いで自発的あるいはスーパーオキシドディスムターゼによりO2・-から過酸化水素(H2O2)を産生する.MPOは,食胞内あるいは細胞外に放出されて,H2O2と塩素イオン(Cl-)から次亜塩素酸(HOCl)が産生される反応を触媒する(図1).生体内の他の組織では,活性酸素はミトコンドリアの電子伝達系の漏れとして生じているが,好中球はむしろ積極的に活性酸素を産生している細胞である.
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