- 有料閲覧
- 文献概要
第96回日本病理学会総会は大阪大学の青笹克之教授を会長として,例年より早めの2007年3月13~15日の3日間,大阪国際会議場で開催された.春の総会はプログラムが豊富で,演題数も多く,全国から多数の病理医,病理学研究者の集まる祭典でもある.今回も1,000題を超える一般演題の応募があった(一般口演315題,示説発表733題うち学生36題).広い会場のためポスター会場,機器展示会場,書籍展示が1会場にまとめられ,休憩所も多数か所確保されており,上下の行き交いはあるが,移動しやすい会場であった.コアプログラムは宿題報告3題,特別講演2題,教育講演3題,シンポジウム3題,日独交流セッション,ワークショップ9題で,その他例年恒例となった系統的病理診断講習会,臓器別診断講習会,12題のランチョンセミナー,1題のイブニングセミナーとコンパニオンミーティングが行われた.
宿題報告は近年公募によって行われており,今回は動物実験モデルから人前立腺癌を再現しその発生・進展を検討した病理学らしい基礎的研究,他の2題はマクロファージの分化・機能制御機構の解析と障害心筋における不整脈源性基質の関連など分子病理学分野から得られた最新の知見を得ることができた.教育講演では病理学と疫学の接点,シンポジウムでは医療関連死を取り上げた「病理学と法医学の架け橋」,ワークショップでは臨床科や病理学会以外の演者を交えた「病態診断と治療」,「先端医療」の講演が行われ,あらためて病理学の深さと広さ,多様性を実感できた次第である.またアジア,英国,ドイツ,米国の演者も招かれた国際色豊かな講演も有意義で,版を重ねている病理学の世界的な名著であるRobbins Pathologyの編集者Kumar教授の特別講演は今後の病理教育を考えるうえで,印象深かった.
Copyright © 2007, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.