シリーズ最新医学講座・Ⅱ 耐性菌の基礎と臨床・8
主として市中感染で問題となる耐性菌・2
肺炎球菌・インフルエンザ菌(基礎編)
生方 公子
1
Kimiko UBUKATA
1
1北里大学北里生命科学研究所
キーワード:
PRSP
,
BLNAR
,
耐性菌感染症
Keyword:
PRSP
,
BLNAR
,
耐性菌感染症
pp.1051-1056
発行日 2006年9月15日
Published Date 2006/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542100718
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はじめに
市中呼吸器感染症の原因菌としての頻度の高い肺炎球菌やインフルエンザ菌において,薬剤耐性化が進行している.これらの菌にみられる耐性化の特徴は,菌の発育に必須の構成物,あるいはその構成物を合成するための酵素などが,その生存に差し支えない程度に変化して耐性化しており,“質的変化による耐性化”と呼ばれる.プラスミドやトランスポゾンに依存したβ-ラクタメースをはじめとする高いレベルの耐性を付加する耐性化とは本質的に異なっている1).
一方,これらの菌は健常人の上気道からもしばしば分離され,常在細菌としての一面も有し,抗菌薬に曝されやすい環境下に棲息しているが,わが国における抗菌薬の開発状況とこれらの菌における耐性菌出現との関係をみると,ABPC(ampicillin)などの経口ペニシリン系薬に替わって経口セフェム系薬が繁用され始めた1980年代後半以降に急速に増加している.
本稿では肺炎球菌とインフルエンザ菌にみられるいくつかの抗菌薬に対する耐性化機構と耐性化の現状について述べる.
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