今月の表紙 細胞診:感染と細胞所見・5
単純ヘルペスウイルス
市川 美雄
1
,
海野 みちる
2
,
坂本 穆彦
2
Yoshio ICHIKAWA
1
,
Michiru UMINO
2
,
Atsuhiko SAKAMOTO
2
1杏林大学医学部付属病院病院病理部
2杏林大学医学部病理学教室
pp.480-482
発行日 2006年5月15日
Published Date 2006/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542100104
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細胞診で単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus;HSV)感染細胞を診断する機会は多く,ウイルスの概要や臨床的事項を知ることは有用である.尿・喀痰・皮膚擦過などの検査材料で感染細胞をみることもあるが,外陰部・子宮腟部スメアでの観察の機会のほうが多く,性器ヘルペスを中心に記載する.
HSVは血清型で1型と2型に分類される.臨床的には初感染初発・非初感染初発・再発にわけられる.1型は主に上半身の皮膚粘膜・角結膜・脳・陰部(初感染型)などに感染し,性器感染は2型で非初感染初発・再発型が多い.近年では1型感染の増加傾向が認められる.一般に,性器ウイルスの伝播は接触により皮膚や粘膜などの表面に水平感染する.HSVは不顕性感染が多く,1型は三叉神経節に,2型は仙骨神経節に潜伏し,宿主の体調不良・紫外線・ストレス・月経などが誘因で発症する.垂直感染した新生児のHSV感染は,全身的な病変を伴い重篤な経過をたどることもある.また,免疫抑制物質の投与・悪性腫瘍などの免疫力の低下した患者では日和見感染が認められる1~6).
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