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1920年頃にパパニコロウが確立した細胞の形態から悪性腫瘍の診断をしようとする細胞診は,悪性腫瘍の早期発見を目的とした医療現場や集団検診の中で発展を遂げ,スクリーニング検査として広く普及している.厚生労働省は2004(平成16)年3月「がん検診に関する検討会中間報告」をまとめたが,この中で,子宮頸部の細胞診による子宮頸部がん検診は“現在のところ,検診による子宮頸部がんの死亡率減少効果があるとする十分な根拠があるとされており,精度の高い検診手法である”と記載されている1~3)(図1).子宮頸部癌は浸潤癌になる前に,細胞診により上皮内腫瘍の段階で発見することができる.上皮内腫瘍は軽度異形成・中等度異形成・高度異形成・上皮内癌に分けて表記されることもある.近年,子宮頸部扁平上皮癌では,その病態にhuman papilloma virus(HPV)が関与することが疫学的に明らかにされた.わが国の「子宮頸癌取扱い規約・改訂第2版」組織分類では“HPV感染による細胞異型であるコイロサイトーシスは軽度異形成に含まれる”と明記されている4).
コイロサイトの特徴は,扁平上皮細胞の核の周囲が大きく抜け,細胞質辺縁が厚く肥厚する点であり,パパニコロウ染色でライトグリーンやオレンジ色に染まる.核は単核および多核で,核の不整が観察される細胞もある(図2~4).パパニコロウ染色による光学顕微鏡標本では,ウイルスを見ることはできないが,in situ hybridization法により,ドット状に染まるHPVを確認することができる(図6,7).HPVが扁平上皮細胞に感染するときは,まず基底細胞に感染し,少ないDNAだけで潜伏する.表層の分化した細胞では,潜伏していたDNAの1万倍以上のコピーにまで増え,キャプシドもつくられ自らをウイルスとして形成している.このとき細胞・組織学的にコイロサイトーシスとして観察される(図5~7).
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