特別寄稿
患者家族滞在施設設立の経緯と課題・1
松谷 美和子
1
1東京大学大学院医学系研究科博士課程
pp.880-886
発行日 2000年10月1日
Published Date 2000/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541903111
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近年の医療技術ならびに治療学の進歩に伴って,専門的な高度の医療を受ける患者が増加している.こうした医療は都市部の病院で提供されることが多く,専門的な医療を受けるために遠方から来院する患者が数多く存在する.家庭を離れ長期にわたって繰り返し治療を続けなければならない患者とその家族にかかる負担はかなりのものと考えられる1〜3).
特に小児がんなどの治療のために,入院または通院しなければならない子どもを持つ家族の多くは,子育て時期の比較的若い家族である.それだけに,自宅から遠く離れた病院での治療は,親に様々な負担を強いる.入院中の患児に付き添うために,親は白宅を離れ,病院に近いホテルなどの宿泊所を利用しなければならない.一方,病院は,患児の生活の質(QOL)の向上ならびに医療提供の効率化を考えて,できるだけ外泊を多くし,また可能な限り通院治療に切り替えるようになってきており,通院の困難な遠方からの受診者にとって,親子が安心して滞在できる病院近接のわが家のような施設の存在が不可欠となっている.
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