主張
医療における選択
B
pp.1009
発行日 1999年11月1日
Published Date 1999/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541902842
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医療法第69条は,法規制により医療に関する広告を制限している.しかし,まず広告という言葉をもってどのような定義がなされているかが不明であり,さらに,この制限は適正な医療を受けることができることを確保するためであるが,医療に関する専門的,科学的知見に基づいて広告の内容は決定され,かつ広告の方法も法規によって定められることが利用者にとって非常にわかりづらくなっているのではないか.
戦後の混乱期に,国民に生活の安心を保障するために整備された医療は,「貧困からの救済」という基本理念のもとに,公平という概念に基づいて量的整備が行われてきた.その間,いわゆる「お上」による配給的性格—これは医療保険制度ならびに医療提供体制両者ともいえるが—を有した時代には法制度による各種規制が必要であったことも事実である.21世紀を目前にした今日,国民の社会生活は大変豊かになり,個人の選択が重要視され,また,国際的水準を確保することも求められるようになった.そのような社会では,医療提供にかかわる質の向上のための「ドライヴィング・フォース」として法制度と経済誘導のみでは極めて不適切になった.そこで,それらにかかわることとして,規制緩和と情報の開示が対をなすことであると検討されつつある.
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