特別寄稿
EBMと診療ガイドライン
髙原 亮治
1
1厚生省大臣官房厚生科学課
pp.661-669
発行日 1999年7月1日
Published Date 1999/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541902754
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近年,EBM (Evidence basedMedicine,根拠に基づいた医療)という概念が急速に普及している.EBMやその周辺の事情については,筆者も紹介しているし1),標準的な教科書の邦訳も出版されている2〜4).
急速に普及したものの常として,EBMも例外ではなく,誤解と反発を引き起こしている.第1は,EBMは臨床上の経験を軽んじ特殊な統計学に依拠している,というものである.これに対しては,EBMの教科書自体を一読して誤解を解いていただく以外にない.また,EBMは,一般の患者,消費者の医療批判から,伝統的な医学の権威を臨床疫学という新奇な方法で守るものであるという議論に至っては,EBMの発展してきた歴史的過程や科学思想史的な位置に対して医学の専門家としてあまりにも理解がないというべきであろう.確かに,EBMが近年わが国やG7といわれるサミット諸国やWHOで「公認」の医学思想として認められつつあるのは事実である5)が,これは,その普遍的性格によるものであって,既成の権威を保守するための陰謀ではない.むしろ,EBMの思想は患者,市民に対し,医学専門誌上において,専門家と対等に議論を行うという雰囲気を形成しており,明らかに理知的な消費者運動の側に立っている.
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