主張
営利・非営利に関する議論の仕方
B
pp.513
発行日 1999年6月1日
Published Date 1999/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541902716
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営利企業体が病院経営に参加することを認めるかどうかということが規制緩和の中でしばしば議論されている.参入に賛成する意見は営利企業体の経営手法を導入することにより医療サービスの質が向上し,利用者に期待されるサービス内容となり,さらに,経済的効率性が達成されるということである.反対意見は,医療提供においては営利という考えそのものが悪であり,医療には営利という概念はそぐわず,さらに,利益が確実とみられる一部の分野のみ営利事業の対象となってしまい,その結果,全体の医療が「食い物」にされるという考えのようである.この双方の意見は両者とも極めて稚拙で,一方的で,断片的な意見であり,かつ,精神論としての非営利の概念と組織体の経営の概念が混在していて社会的に納得できるものではない.
営利と非営利という概念を明確に組織論と位置づけ,お互いに排除することなく,おのおのの役割を考えてみる必要がある.例えば,社会保障制度の基本的役割の一つに所得再配分機能がある.この所得再配分は,営利組織が納める税金で制度として行うのか,あるいは非営利組織が非課税の事業として福祉や教育などの分野を含めて実践することが期待できる.このことは社会的な存在として営利,非営利の組織体がそれぞれの役割に応じて共存できることを示している.
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