医療技術革新の展望とこれからの医療政策—ヒト遺伝子研究の意味するもの
ヒト遺伝子研究への政策的対応—遺伝子関連技術をどのような技術としてとらえるべきか
広井 良典
pp.603-609
発行日 1995年6月1日
Published Date 1995/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541901538
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第3次医療技術革新(承前)
分子生物学・技術革新・医療費
医学医療の流れとヒト遺伝子
ヒト遺伝子研究と医学医療の流れといえば,自ずと浮かび上がるひとつの領域がある.それは「遺伝病」の研究(その診断・治療)である.
メンデルの法則が「再発見」された1900年のわずか2年後,イギリスの医学者ギャロッドは,アルカプトン尿症(尿が空気に触れると黒色に変わる病気)がメンデルの法則に従う劣性遺伝であることを発表する.これは,メンデルの遺伝法則が「人間」について示された最初のものであった.ギャロッドはこの病気の患者の場合には正常な代謝過程が何らかのかたちで阻害されているとし,これらを「先天性代謝異常」(inbom error of metabolism)と呼んだ.1914年まではこうした先天性代謝異常においては代謝過程を正常に進行させるための酵素が欠けていることが示され,その酵素が単離された.こうして,アルカプトン尿症をもたらす遺伝物質は代謝過程のある段階を阻止する働きをしていることが示された.ここに初めて「遺伝子」と「疾病」との結びつきが明らかにされたのである.
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