MSWの相談窓口から
単身者と家族
加島 明
1
1北里大学病院総合相談部
pp.79
発行日 1994年1月1日
Published Date 1994/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541901139
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「単身者」との出会い
20歳のAさんは10階から飛び降りた.命は取りとめたが下半身麻痺が残った.Aさんは高校卒業後,上京した.ほどなく就職先になじめずに転職した.慣れない都会での単身生活で精神が破綻を来すのに1年とかからなかった.入院時には既に定職も住居さえも無くなっていた.Aさんは故郷に母と妹がいた.父は幼い頃に失踪し行方不明で,母が一家を支えてきた.仕事に家事に忙しくAさんの見舞いには一度も来たことがない.「面倒が見られない」の一言でAさんの引取りを拒否した.
飯場で倒れ,救急車で搬送されたBさんは脳出血で意識不明の重体だった.飯場に届けてあった住所や親族の連絡先はでたらめで家族と連絡がとれなかった.安否を気遣いながら警察に身元を照会すると,数日後,前科者リストから本名・住所がわかる.連絡すると受話器を取った老婆が名前を聞くなり一方的に電話を切った.改めて掛け直すと今度は若い男性が出て「父は今まで散々家族に迷惑掛けてきた.親だと思ってない.連絡もらっても困る」.重体であることを伝えるが態度は変わらず,面会には来ないという.死んでも連絡してくれるなと言い残し電話は切れた.出棺の時,私一人で見送った.
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