人
患者の信望を集める学究的な臨床家 第二十九回全国自治体病院学会長・宮城県立成人病センター院長 庄司忠實氏
的場 直矢
1
1仙台市立病院
pp.466
発行日 1990年6月1日
Published Date 1990/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541900653
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宮城県立成人病センターの庄司忠實院長は,東北大学昭和28年卒業で,私の一級下でした.学生の頃から顔は知っていましたが,交誼を頂くようになったのは,昭和35年,私が花巻病院の佐藤進外科医長(現院長)の外遊の留守番として派遣された時からです.庄司君は胃腸科医長として,患者さんの絶大な信望を集めていました.私は単身赴任で,時には自宅まで押しかけて,奥さんの手料理を頂いたりしました.当時は上部消化管出血に対して,内視鏡的止血法やH2ブロッカーなどの薬剤のない時代でしたから,姑息的治療で止血しないとすぐに外科に送られたものでした.それまでの経験では,吐血患者の出血部位が確認されないまま外科に回ることも少なくないので,術中,出血部を探すのに大変苦労することもありました.ところが庄司君は透視や胃カメラで粘り強く出血部を見つけて送ってくれるので,外科医にとって大変有難い存在でした.
胃カメラといえは,私が花巻に行って間もなく,庄司君が見つけた胃カルチノイドという組織標本を見せられよした.ちょうど私が花巻に行く直前に仙台で先輩に見せてもらった胃グロームス腫瘍に酷似しているので再検討をおすすめしたところ,病理学者の同意が得られました.庄司君は早速邦文と英文で報告し,私も共著者として名前を連ねて頂く光栄に浴しました.この症例は私が仙台で見たものより早くペーパーになったので,胃グロームス腫瘍の本邦第1例になったそうです.
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