特別論考
精神科急性期治療の臨床経済学試論(1)—精神病院が病院であるために
平田 豊明
1
Toyoaki HIRATA
1
1千葉県精神科医療センター
pp.54-60
発行日 1990年1月1日
Published Date 1990/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541900550
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今,何故このような試論が必要か?
先般,「医療機関の効率的運用指針の策定に関する研究」(昭和63年度厚生科学研究)において,医療施設の類型化に関する試案が提示された(表1).この試案は,入院医療費のランク付け強化をテコにして在院期間の短縮と医療水準の向上を図ろうとしてきた従来の診療報酬改定作業の理念を一歩推し進めたものといえるが,ここでは,精神病院群が,その群内変動を無視して現状の算術平均を反映する形で,低スタッフ密度,低医療費の一群に一括して類別されている.確かに,精神科の入院医療は,スタッフ密度,在院期間,医療費単価のいずれをとっても,他科の平均に比べて大いに遜色がある(表2,56ページ).
筆者は,この試案に盛られた精神病院に対する評価を,精神科医療の内部事情に疎い一部の非専門家による極論とは受けとめず,むしろ,世論一般による精神病院群に対する率直な評価を代表するものと捉えている.そして,この認識に立ったうえで,精神科の臨床に携わる者の立場から,実証的なデータに基づいた反論と代案を用意する必要があると考えている.算術平均では表現されない精神病院群の群内変動,さらには1病院内でも病棟ごとの機能分化があり,これらのばらつきの分析なしには,今後の精神科医療のリアルな方向性は語れないと思うからである.
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