主張
病院給食論議
N
pp.949
発行日 1993年11月1日
Published Date 1993/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541900492
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医療保険審議会が「給食費や室料などの給付のあり方を見直すべきだ」という中間報告を公表してから,にわかに病院給食の問題がクローズアップされてきた.これに対して早速栄養士会や病院界の一部より反対の意見が出された.反対の論拠はおおむね入院給食は医療の一部であるからこれを患者負担にすれば医療の現場が混乱する,とするものである.しかし,この論点では自己負担の是非論にはなり得ない.もともと医療にかかるコストが正当なものであれば何らかの形で受診者が全額支払うのが当然である.その支払いの多くの部分が相互扶助の観点から保険料や公費で賄われている.もちろん医療にかかわる自己負担はできるだけ少なければ少ないほど良いにきまっている.しかし,社会保障費の負担を公平に分担する一方,給付における公平も維持されなければ社会的不公平が助長されることになる.このことは老人医療費における負担と給付のアンバランスにも見られており,将来必ず世代間の不公平感が現実のものとなりそうである.
この問題で朝日新聞有岡編集委員のインタビューに答えた村瀬日医会長の見解は非常に明解であり正論である.病院給食の自己負担論議の際にはいかに医療における負担の公平さを保つかを考えて行うべきであり,単に医療費の財源問題として是非を問うのも間違いであり,また従来の既得権的考え方にも問題がある.
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