連載 今,なぜ戦後医療技術史か・6
蘇生技術の進歩とその今日的課題
上林 茂暢
1
Shigenobu KANBAYASHI
1
1みさと健和病院内科
pp.739-744
発行日 1992年8月1日
Published Date 1992/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541900164
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救命・救急医療の明暗
頭部,四肢,胸部,腹部に及ぶ交通事故外傷,広範な熱傷,重症の心筋梗塞や脳卒中発作,未熟児出産,中毒…,蘇生技術の進歩が救命・救急医療にめざましい成果を上げているのは周知の事実であろう.これらの高度医療に限らず,種々の成人病のアクシデントや術中術後の急変に直面する地域病院においても日常,蘇生技術を欠くことができず,卒後初期研修の重要な柱の一つに挙げられている.その結果,かつてはあきらめられたような高齢者や重症者の手術・治療に挑戦,救命・社会復帰を可能にしている例が少なくない.
にもかかわらず他方,その最前線ともいうべき救命救急センター1)で憂慮すべき事態が報じられている2).名古屋大学付属病院救急部は,1983年愛知県の三次救命救急医療機関の一つとして発足,91年4月から24時間体制に入った.ところが5名の医師が辞め,4月から救急医療を停止せざるをえなくなった.深刻な看護婦不足のためベッド制限・閉鎖に追いこまれる例は一般にもようやく知られるようになってきたが,今回は医師問題も表面化してきたことになろう.
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