精神科医療 総合病院の窓から・13
業深きもの—精神科医の仕事
広田 伊蘇夫
1
Isoo HIROTA
1
1同愛記念病院神経科
pp.364-365
発行日 1992年4月1日
Published Date 1992/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541900081
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ある賀状によせて
この新年,「精神科医という仕事はなんと業の深きことか,としみじみ考える.つらいことだなァと.自信の不足ではない」と記された賀状をいただいた.すでに喜寿に近く,精神科医として50年,この間,精神分裂病の双生児研究や,精神医学の著名な古典の共訳などで活躍され,今なお週2日,ひとりひとりの患者を丹念に診察しつづけておられる,わが心の師からの便りである.詩人,茨木のり子さんにならえば,「ひとのこころの湖水,その深浅に,立ちどまり耳を澄ます,ひとり耳そばだてる」こと50年,「頼りない生牡蠣の様な感受性」と「震える弱いアンテナ」をもって,病む者の声を受けとめつづけた果てに,精神科医という仕事の業の深さ,つらさを賀状に托されたものと私には映る.気負いとてなく,ひたすらに重い便りである.
そもそもの話,精神科医としてのありようを,岡倉天心の『茶の本』のなかの一章にこと寄せて教えていただいたのはこの師だった.その要旨を記してみる.
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