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■はじめに
看護必要度の開発の目的は,病棟における看護業務の状況に合わせた看護職員の配置を合理的に行うマネジメントツールの開発であった1).その後,看護業務の負荷を評価する機能が診療報酬上で評価され,入院基本料のベースを決める「重症度,医療・看護必要度」(以下,看護必要度)として活用されるに至っている.しかし,この間,入院基本料を決めるという側面が重視されるあまり,医療政策や介護政策を決める公的委員会では,本来の看護管理への活用という視点が弱くなっているように思う.
多くの臨床研究が医療の質の改善を目的として行われるように,看護必要度も看護の質を改善するための「臨床研究」のツールとして活用されることが必要である.特に,開発者の筒井孝子氏の設計により患者の状態像を評価するB項目が設定されていることは重要である.介護保険における認定調査票を開発したのが筒井氏であることを踏まえれば当然のことではあるが,B項目の内容は医療と介護とで共通のものになっている.社会の高齢化が進み医療と介護との複合ニーズが増大している今日,急性期医療と回復期・慢性期医療,そして医療と介護との連携を促進するために,B項目で測定される患者状態を評価することが重要になっている.具体的には,「どのような状態であれば,急性期病棟から退院できるのか,退院できる場合,状態像から考えて退院先はどこが適切なのか,そして各環境で受け入れる場合,ADLケアにおいて何に注意しなければならないのか」が明らかにできるのである.
DPC調査においては医学的視点での退院サマリである様式1,入院中に行われた医療行為の詳細とその出来高換算コストが記録されているEFファイル,そして看護必要度を記録したHファイルが作成されている.これらのデータを用いることで,急性期入院だけでなく,退院後のケアも視野に入れた連携のための評価を行うことが可能であり,そのための臨床研究が求められている.そこで,本稿では筆者が所属している厚生労働省の研究班のDPCデータを用いて,看護必要度を用いた臨床研究の事例について報告する.
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