連載 ケースレポート
地域医療構想と病院・38
カナダ・ケベック州のMcGill大学病院における家庭医養成
松田 晋哉
1
1産業医科大学公衆衛生学教室
pp.952-955
発行日 2020年12月1日
Published Date 2020/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541211324
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■はじめに
人口の高齢化に伴って複数の慢性疾患を持った高齢患者が増加し,病院における急性期・回復期・慢性期の複合ニーズへの対応が先進諸国共通の課題となっている.こうしたニーズに応えるために,多くの国で総合医の育成が重視されるようになっている.また,その活動場所も診療所を中心とした外来から,病院医療に拡大してきている.しかしながら,入院医療にも対応できる総合医をどのように育てていくかについては,まだ多くの国で試行錯誤の状態にある.例えば,フランスの場合は,総合医を目指す医師を増やす目的で総合医を専門医課程の一つに位置付けるなどしているが1),研修課程は2年間で,1年間の病院での研修の後,地域の開業医の下で外来を中心とした指導を受ける形になっており,病院総合医として勤務するためには不十分である.ただし,フランスの場合,大学5年次・6年次のベッドサイド研修が,わが国の初期研修と同様の内容になっているため,卒業時点での臨床力はわが国に比べるとかなり高い注1.
わが国でも病院総合医の必要性に関する認識が近年高まっている.すでに病院総合医の育成に先進的に取り組んでいる済生会熊本病院や聖路加国際病院には,病院総合医を希望する若い医師が集まり始めている.筆者が医学生の頃から人気の高かった沖縄県立中部病院も,総合性の高い医師の養成を行っていることが若い医学生を引き付ける魅力の一つであった.
本稿では前回2)に引き続き,総合医の養成課程の在り方として筆者が高く評価しているカナダ・ケベック州のMcGill大学病院における家庭医の養成課程について説明する.
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