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今号は最初にぜひCOMLの山口氏との対談から読んでもらいたい.1990年,日本医師会がinformed consent(IC)を「説明と同意」と訳してその内容を紹介した同年に発足したCOMLは,日本のICの歴史と共に歩んできたと言っても過言ではない.1999年に立て続けに起きた医療事故報道をきっかけに広がった国民の医療不信,『医療崩壊—「立ち去り型サボタージュとは何か」』(小松秀樹著)に象徴される日本の医療現場の疲弊と閉塞感の顕在化など,この30年間で日本の医療現場は激変した.軌を一にして変わった日本のICのこれまでとこれからの課題を山口氏との対談で理解できる.
特集では,厚生労働省勤務を経験し,公共政策を専門とする社会学者である広井氏に「成熟した人口減少社会における病院-患者関係」を執筆いただいた.このような時代には心理的サポートに加え社会的サポートが必要となりコミュニティの重要性が増すこと,その中心として福祉・医療関連施設に期待が寄せられていることが指摘されている.続いて,健康情報学が専門の中山氏に新しい医療コミュニケーションのあり方であるShared Decision Making(SDM)について,ICとの比較を交えて議論いただいた.「不確実性の高い医療現場では,SDMがなければEBMはエビデンスによる圧政に転ずる」との指摘にはハッとさせられる.現場での病院-患者関係の変化として,まず西澤氏には,佐久総合医療センターのPFM(Patient Flow Management)を紹介いただいた.ますます効率的に重症患者を数多く診察することが求められる急性期病院では,医療スタッフの負担が増す一方で,高齢化による併存症から複雑化する疾病状況,多様化する家庭状況のなかで,良好な病院-患者関係を構築するためにはPFMが不可欠になっている.また,医療安全を専門とする後氏には,大学病院での新人職員オリエンテーションから医療機能評価機構の取り組みまで,患者中心の医療を提供するための具体的な活動報告と私見を寄せていただいた.医療事故に遭遇した遺族の立場で,かつ,医療現場の医療対話推進者として,厚生労働省「上手な医療のかかり方推進委員会」の構成員として活動を続ける豊田氏には,当事者の目を通して病院-患者関係を論じてもらった.そして,家庭医の孫氏に,病院の視点より広い地域医療の視点で,これから必要な病院-患者関係について論じてもらった.医学モデルではなく生活モデルの視点が求められる時代には,患者を社会文化的な背景を持った「コンテクストの中の個人」と捉えなければならないこと,必要なことは「対話(ダイアログ)」であるとの指摘は,特に病院に籠りがちな医療スタッフには,耳が痛いが大事な指摘である.
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