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■何が問題だったのか
①現地で高コストの病院を建て巨額の借金を抱える
愛知県津島市は,名古屋市の西約16kmに位置する人口約6万1千人の市である.鎌倉時代から,尾張と伊勢を結ぶ要衝として,また,天王信仰の中心地である津島神社の鳥居前町として発展してきた.戦国時代は織田氏三代がこの地を統治し,「信長の台所」と呼ばれて尾張の商都であった歴史を持つ.明治以降は,繊維産業が盛んとなり,紡績業の町として繁栄した.現在も海部津島広域行政圏の中心であり,裁判所,税務署,労働基準監督署,警察署,保健所などの国・県の施設が立地する.しかし,最近は,自動車などの産業が数多く立地する愛知県内で,繊維産業に代わる産業が十分育たなかったことから,財政はやや厳しい状況にある.2018年度の財政力指数は0.77で,愛知県内54自治体の中で46番目となっている.
津島市民病院(440床)は,愛知県西部の海部医療圏にある基幹病院の一つである.他の基幹病院としては,JA愛知厚生連海南病院(540床),あま市民病院(199床)がある.1943年に社会事業協会から移管され,津島町立病院(一般58床)となり,1947年の津島市の市制施行とともに,津島市民病院となった.1970年には総合病院として認定され,1985年には289床となった.順調に発展してきた津島市民病院の経営が悪化する最大の原因となったのが病院の建て替えである.旧病院建物の老朽化に伴い,1997年から病院の改築事業に着手する.さらに,2001年に海部津島医療圏(現・海部医療圏)が名古屋医療圏から分離される中で,医療圏の病床数に不足が生じたことから,2003〜2005年度に151床の増床を行い,440床の病院となる.病院改築は移転ではなく,建設期間が長くコストの高い現地建て替えとされたため,新病院の整備費は,病院建物152億円(1床3400万円),医療機器約51億円,合計202億円に及んだ.財源の多くが借金によって賄われ,2005年度末の企業債残高は約161億円,2007年度の元本利息の返済額は約12億円に及んだ.
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