辛口リレーエッセー 私の医療論・病院論
ハードとソフトの患者サービス
伊藤 雅治
1
Masaharu ITOH
1
1労働福祉事業団愛媛労災病院
pp.1054
発行日 1989年10月1日
Published Date 1989/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541209707
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私たちの病院は現在増改築工事中である.設計の基本理念としたのは,「病院臭くない病院,しかも機能は最高のものに」ということであった.従来,病院には暗いイメージがあった.狭いごたごたした所に,いかにも病人という人々が沈痛な面もちで長時間待っている.まずこのイメージを取り払うために,建物に余裕を持たせることにした.玄関ホールは広く,待合室は吹き抜けとし,中庭の樹木も眺められる.吹き抜けの広い壁面には,市制50周年記念の式典に出場した勇壮な地元新居浜名物太鼓台の油絵を坂田虎一画伯に描いていただき,幅6.5m,高さ2.7mの有田焼の陶板壁画として掲げ,また,三浦啓子女史のデザインによる愛媛県の県花「蜜柑」と題するステンドグラスをはめ込み,イタリア産の大理石の壁の色に映えて,暗い病院のイメージを一掃した.
手術室も清潔,準清潔ゾーンを完全に分ける外周廊下方式にしたが,外周廊下は広く,広い窓からは外の景色が見える.患者はハッチウェイを経て各手術室に入るが,広く明るい廊下には運搬にあたる看護婦のみで,空を眺めながら行けるので,従来の手術室のように大勢の医師や看護婦が忙しく動き回り,器具のごたごた置いている中を通って行くよりストレスが少ないだろうと考えた.
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