人
天然痘根絶で日本国際賞を受賞国立熊本病院院長 蟻田 功氏
麦谷 眞里
1
1厚生省大臣官房国際課
pp.564
発行日 1988年7月1日
Published Date 1988/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541209320
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ジュネーヴの南にラコネという小さな村がある.ジュネーヴからは一本道であるが,慣れていないとなかなか分かりにくい.3年前の1985年まで,蟻田先生はその村に住んでおられた.そして,初めて先生のお宅を訪ねる人には,その分かりにくいラコネ村までの道順を的確に指示されていた.その的確な指示振りは,まさに,WHO天然痘根絶対策本部長を彷彿とさせるものがあった.
蟻田先生は,1926年生まれ.厚生省に厚生技官として奉職中の1962年,WHOのアフリカ地域事務局に,天然痘対策の担当官として招かれた.当初,二,三年で再び厚生省に帰られる予定であったが,その手腕が高く評価され,1964年には,ジュネーヴの本部に移り,1966年,天然痘根絶対策本部発足と同時に,D.A.ヘンダーソン部長(現:アメリカ合衆国ジョンス・ホプキンス大学・衛生公衆衛生大学院長)のもとに医官として参画された.更に1977年,ヘンダーソンがジョンス・ホプキンスに移った後,本部長に就任されて,全世界の天然痘根絶対策の陣頭指揮を取る立場になられた.そして,1980年,3000年の長きにわたって人類を苦しめてきた天然痘の根絶宣言が,WHOの手によってなされたわけである.その,快挙とも言える偉大な功績によって,1988年の日本国際賞が,蟻田先生ら3氏に贈られたことは,われわれの耳目に新しいところである.
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