精神病院 わが病院づくり
—長野県・南信病院の経験から—開放病棟の経験と,これからの精神病院の在りかた
近藤 廉治
1
Renji KONDO
1
1南信病院
pp.80-85
発行日 1988年1月1日
Published Date 1988/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541209218
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はじめに
私は昭和47年8月,長野県伊那市に南信病院を開設した.全開放方式のベッド数104(うち保護室3)の病院である.入院患者を選ばない,全開放方式の精神病院を設計の段階から考えたのは,おそらくわが国では最初のことと思う.
周知のとおり,それまでの精神病院はほとんどが鉄格子と鍵のある病棟,つまり閉鎖病棟であった.「精神障害者は隔離して治療しなければならない」という法律もあり,向精神薬のなかった時代の治療の手段としては仕方のないことであった.しかし,向精神薬が使用されるようになって30年近くなるのに,なかなか開放化がすすまないのはいろいろな理由もあるが,なんといっても精神障害の治療の難しさにある.古い分裂病患者の多くは家族と疎遠になりがちなので,精神病院ではやむを得ず家族から金を預かって,家族の代わりに日用品の買物,洗濯,つくろい物,入浴の世話など,いわゆる代理行為を看護業務として行ってきた.
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