患者からみた病院
忘れられない婦長さんの手のぬくもり
野呂 真奈子
Manako NORO
pp.679
発行日 1986年8月1日
Published Date 1986/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541208890
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昭和58年7月,信号機に衝突,転倒して頭を強打,2度の手術にもかかわらず,事故以来6か月意識の回復のないままの主人に付き添って,11月にオープンしたばかりのK病院に転院したのは12月も押し詰まったころだった.転院の前に以前の病院の医師からおそらく意識は戻らないだろうと言われて,事故の時から片時も離れずにきた私とそれを支え続けてきてくれた長男は絶望的になっていた.そしてK病院での部屋も決まって一段落した時,私は激しい胃の痛みで立っていることすらできなくなってしまった.今思い出してもその時の外来の婦長さんの温かい心のこもった対応に胸がジーンとしてくる.診療時間の過ぎた1階のロビーで事情を説明すると,私の背に手をあて何度もさすりつつ診察室へ連れて行ってくださり,先生に細かく話をしてくださった.先生も「大変だね.少し落ち着いたら検査を受けたほうがいい」と痛み止めの注射をしてくださった.あの時の婦長さんの手のぬくもりを今でもはっきり思い出すことができる.
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