病院精神医療の展開
老人精神障害者の入院医療—その現状と問題点
竹中 星郎
1
Hoshiro TAKENAKA
1
1浴風会病院診療部
pp.708-712
発行日 1984年8月1日
Published Date 1984/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541208387
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
精神病院の老人病棟や老人病院の精神科病棟は大半が痴呆患者で占められている.その上に多くの入院待機が控えている.高齢化社会と言われるようになって久しいが,中でも痴呆老人の著しい増加は医療のわくを越えて緊急の社会的問題となっている.在宅の痴呆老人の家族が介護に疲れ果てる現象の一方で,核家族化は老人だけの世帯の増大を生んでいる.
このような背景は老年精神障害の入院の要因に極めてよく反映されている.それらのほとんどは,①異常行動や夜間せん妄,あるいは身体病を併発のための治療を必要とする急性群,②失禁,緋徊,寝たきりなどの介護を必要とする群,の二つに尽きる.前者は治療を目的としており,後者は介護している家族の状況や意向による面が大きい.脳出血のために一般病院に入院して,治療の目的を果たしても痴呆や介護を必要とする機能障害が残ると,家庭へ退院できずに老人病院や精神病院に転送される.これらは医療よりも福祉的問題である.
Copyright © 1984, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.