特集 病院と「くすり」
薬価改定と医薬品業界の実情
富永 英嗣
1
Hidetsugu TOMINAGA
1
1大和証券経済研究所証券アナリスト部
pp.580-584
発行日 1984年7月1日
Published Date 1984/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541208347
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
構造不況業種へのシナリオ
去る3月1日付けで,薬価が業界平均で16.6%引き下げられ,医薬品業界に本格的な氷河期が訪れた.来るべき高齢化社会に対応すべく,毎年1兆円ずつ膨張する国民医療費の増加テンポに歯止めをかける一環である.今回の薬価改正の影響(表1)は,医療費換算で5.1%,7,400億円の削減効果と試算されているが,56年6月の薬価全面改正,58年1月の薬価部分改正との累計医療費換算影響度は,率で35.4%,金額で1兆8,900億円にのぼる.この間,診療報酬の引き上げが56年6月に8.1%,今回2.8%実施され,金額で1兆6,300億円のプラス効果となっているため,医薬品に対しての集中的な医療費圧縮施策が実施されているわけである.このことは,政管健保における毎年5月診療分の医科診療薬剤費比率の推移からも明らかとなっている.表2に示すごとく,57年度,58年度の薬剤費比率は前年度に比べそれぞれ4.6ポイント,1.2ポイントの低下を示し,59年度の見込みについても更に4.7ポイント低下して28.2%になるものとされている.したがって,この3年度間で薬剤費比率は56年度の38.7%から28.2%へと実に10.5%も低下し,59年度には医薬品業界はマイナス成長が確実視される状況である.
Copyright © 1984, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.