定点観測
—奈良県・十津川村から—へき地診療所活動を通じて
中村 達
1
Toru NAKAMURA
1
1十津川村国民健康保険小原診療所
pp.517
発行日 1984年6月1日
Published Date 1984/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541208336
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医学部を卒業して3年の筆者が,紀伊半島の山間へき地である十津川村に赴任して2年たちました.この2年の間に微力ながら努力してきた中で感じたこと,山間へき地の診療所医師だからこそ見えてきた医療の矛盾が多々あります.
「都会の病院で糖尿病と言われて食事療法を何カロリーでしなさいと栄養士に献立を教えられたが,家に帰ってみるとうまくできない.どうしたらよいか」と,72歳のおじいさんが相談に来たのは,雪の降る寒い日でした.よく話を聞いてみると,近くの開業医に受診したこともあり診察を受けるとすぐに薬を処方され気分が悪くなったこともあったということです.この老人は,老妻との二人暮らしで,十津川村の中でも不便な所に住んでおり,食物も随時には手に入れにくい状態なのだそうです.このケースはなんとか外来でコントロールをしていますが,医師の対応が教科書的過ぎて,非現実的であったことを思うと困惑させられるばかりでした.
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