小特集 病院の機能分化—特に専門分化の今後
地域におけるがん専門病院
坪井 栄孝
1
Eitaka TSUBOI
1
1財団法人慈山会医学研究所附属坪井病院
pp.680-683
発行日 1983年8月1日
Published Date 1983/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541208086
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老人保健法という制度の改革により日本の医療は大きな変換を余儀なくされた.その指向する方向が日本国民の医療にとって好ましいか否かはもすこし時間がたってみないと分からないが,ともかく急速な人口の高齢化と社会における価値観の激変がこの方向を選択せざるを得なかったことは確かである.
最近,日本医療の将来展望についての論議が数多く聞かれるようになり,これからの病院のあるべき姿としての二極分化論が活発になってきた.特に私立の中小病院が存続していくためにはいかにあるべきかが大きな問題として取り上げられ真剣に討議されるようになった.いずれにしろ激動する現状の中で,病院が存続していくためには,大学,大病院が数多く存在する大都市と,医療施設が過疎な地方集落とではその病院の存在意義がおのずから異なるであろうが,その地域の中で医療を包括的にとらえ,その中でいかなる機能を分担していくかをまず考え,地域の必要性に合致した機構を具備する自覚が必要であろう.そしてその役割認識の上に立って,病院経営管理に当たってはあくまで学術的背景を重視して病院の資質の向上に努力すべきであり,それによって自らその病院の地域における存在意義が生まれてくるものと考えるべきである.
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