新 病院建築・64
英国の病院建築の系譜を追って—病棟を中心に(その2)
伊藤 誠
1
Makoto ITOH
1
1千葉大学工学部建築学科
pp.345-351
発行日 1983年4月1日
Published Date 1983/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541208004
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ゲリニッジ病院/官製病院第1号
テームズ河をロンドンの都心から東に少し下ったあたり,昔のグリニッジ天文台の近くに聖アルフェッジというかなり老朽化した病院があった.いろいろ検討の末,60年代の初めごろ,これを全面的に建て直すことが決まり,その設計には厚生省建築部がみずから乗り出すことになった.この病院は後にグリニッジ病院と改称されることになるのであるが,何しろ厚生省建築部のスタッフがその総力をあげて取り組んだ本格的な仕事だけあって,内容の豊かな見どころの多い病院である.そんなことで,筆者は第1期工事が終わったばかりの1971年と全体竣工後の78年・81年と,都合3回ここを見学している.
聖アルフェッジ病院は,さほど広くもない敷地に幾棟もの建物が密集しており,建て替え計画もそう容易ではないということで,一旦は別の土地を求めて新築移転する案も検討されたが,全体的な施設配置の観点から,この地区にどうしても中心的な病院が必要であるという結論になり,現地で診療を継続しつつ端から建て直していくことに決まったという.工事は3期に分けられ,第1期工事の着工は1966年である.厚生省建築部は,グリニッジ病院を出発点に,やがてベスト=バイ,ハーネス,ニュークリアスとその計画を発展させていくのだが,そうした意味からもこの病院は官製第1号になるのである.
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