定点観測
健康学習会のすすめ
宮原 伸二
1
Shinji MIYAHARA
1
1秋田県象潟町上郷診療所
pp.342-343
発行日 1983年4月1日
Published Date 1983/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541208003
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生活の場から
鳥海山のふもとの診療所へ私が赴任したのは,昭和46年である.それから12年,治療とともに予防医学にも力を入れ,健康教育に検診にと農民と一緒にがんばってきた.早期胃がんを発見できた喜びもあった.往診中,地吹雪にまかれて命からがら車から脱出したこともあった.毎日運動指導に通い,どうにか歩けるようになったと思ったらクビをつって自殺してしまったおばあちゃんもいた.人口2,400たらずの上郷地区で毎日100人近い患者さんを診て,週に30〜40軒を往診し,地域住民と酒をくみかわしながら村づくりなどを語った悲喜こもごもの年月であった.
私は常に二つのことを自らに言いきかせている.病気を臓器の異常として上べだけでみてはいけない.病気は急にポッと出てくるものではなく,まず初めに人間がいて,そこに生活があって,そして,病気はその中からにじみ出てきたものであろう.それゆえ,病気を診るときは,人間そのもの,つまり生活の場から病気を診なくてはいけないということ.もうひとつは,患者の訴えや話をよく聞いて,ときには必要最小限度の検査を行って,その患者が自分の手に負えるものであるかどうかを判断し,適格な処置をとらなくてはいけないということ.この二つである.
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