定点観測
—秋田県・象潟町から—住民立の上郷健康センター
宮原 伸二
1
Shinji MIYAHARA
1
1象潟町上郷診療所
pp.892-893
発行日 1983年10月1日
Published Date 1983/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541208146
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私たちの地域(秋田県・象潟町上郷地区,人口2,400,戸数500)には,予防医学,健康づくり運動を行うことを目的とした上郷健康センターという組織がある.いわゆる,市町立の健康センター,保健センターとは異なり,住民立,民間立の健康センターで,昭和47年に設立されてから11年,右往左往しながら,地域住民,地域関係機関の力を合わせながら活動してきた.
上郷健康センターを作る運動が起こったのは,住民が3年間の無医地区を経験し,医療要求が高まり,健康づくりの必要性をはだで感じていたときに私が赴任し,医師と住民とが力を合わせる基盤ができたからである.昭和46年に赴任し,私が目の当たりに見たのは,農民の健康破壊のすさまじさであった.脳卒中,進行がん,重症貧血など…….この現実をわずかでも良い方向へ向けるには生活実態を踏まえた医療が必要と思い,私は積極的に地域に出,活動を始めた.学習会や検診活動に.この1年間の活動を通じて,住民の中から「みんなの健康はみんなで守らなくては」という声が沸き上がり,地域のリーダーの音頭とりによって,いかなる機関にも属さない住民による自主的な「健康づくり専門の組織」を設立することができたのである.
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