病院職員の基礎知識 診療科の知識
産科婦人科
坂元 正一
1
,
水野 正彦
1
Shōichi SAKAMOTO
1
,
Masahiko MIZUNO
1
1東京大学医学部産科婦人科学
pp.332
発行日 1983年4月1日
Published Date 1983/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541207997
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最近の産科学の革命的変化
まず,産婦人科の歴史と言っても,あまり昔に遡ってみても意味が少ないと思います.むしろ,現代史が重要なのです.それは,現代史の中に昔なら数百年もかかっただろうと思われるほど大きな変化が凝縮されているからです.例えば,つい10数年前までは,胎児の発育は母親のお腹の大きさ(子宮底長・腹囲)をみることで推定するしか方法がなかったし,また胎児からの直接情報と言えば,ドラウベの聴診器で聴き取る胎児心音がほとんど唯一のものだったのです.今日の産科臨床のレベルからみれば,驚くべきほど遅れた状態で,若い人に聴かせれば,100年も前の状態かと誤解されかねません.最近の産科学の進歩は,このように急速で革命的と呼ぶにふさわしい変革が次々に起こっているのです.
例えば,ホルモン測定法です.免疫学的方法の開発によってHCG,エストリオールなどのホルモンが容易に測れるようになったことが,妊娠の早期診断や胎児胎盤機能検査にどんなに役立っているか,想像してみれば分かることです.超音波検査法の出現も,胎児心音の検出や産科画像診断に飛躍的な進歩をもたらしました.つい10年前までは,子宮の中の胎児を視察することなどは夢のまた夢と思われていましたが,今では現実のことです.胎児の形態,運動,内臓の状態が手に取るように見えるようになったのです.臍帯や胎盤の様子もよく見えます.ですから,子宮は最早密室ではないのです.
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