原著
ヒト精巣性女性化症のH-Y抗原に関する研究
是澤 光彦
1
,
佐藤 正仁
1
,
小池 貞徳
1
,
神保 利春
1
,
水野 正彦
1
,
坂元 正一
1
Mitsuhiko Koresawa
1
1東京大学医学部産科婦人科学教室
pp.879-882
発行日 1979年11月10日
Published Date 1979/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409206134
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純系マウスを開いて,同系内で皮膚移植を行なうと表1のごとく,雌から雌,雄から雄,雌から雄への移植片は活着するが,雄から雌への移植片のみが脱落することより,雄には雌にない特有の抗原が存在することが発見された1)。この抗原をHistocompatibility-Y (H-Y)抗原と呼び,雌にできる抗血清をHistocompatibility-Y(H-Y)抗血清と呼んでいる。純系マウスを用いているので,常染色体は遺伝学的には同一であり,したがって,H-Y抗原は,Y染色体上の遺伝子より作られると考えられる。逆に,ある個体においてH-Y抗原の存在が証明されると,その個体においては,Y染色体上の遺伝子が機能している証拠となる。
さて,性分化異常の一つに,精巣性女性化症Testic—ular ferminization syndrome (以下Tfmと略す)という状態がある。これは,染色体型は46XYの男性型であるが,外見は,図1に示すようにまったく正常女性と同じである。しかし,性腺は精巣から成り,内性器は欠如し,泌尿生殖洞に由来する腟下部のみが存在し,外陰形態は女性型となっている。恥毛は欠如している。
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