リハビリテーション院内から地域へ
地域リハビリにおける作業療法士の役割
宮岡 秀子
1
1国立療養所長崎病院
pp.225-227
発行日 1982年3月1日
Published Date 1982/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541207692
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病院内作業療法
病院における作業療法は,患者の早期セルフ・ケアの自立を目標としている.このセルフ・ケアの自立とは,移動能力を獲得することを基本としながら,食事・排泄・更衣・身だしなみなどの行為が自立することである.疾病によって失った自己への身体感覚を取りもどし,社会的存在としての生活感覚を維持するためには,なるべく早期に上記の諸行為が遂行できるようになることが望ましい.例えば,発症時からの周りの都合で,長期に渡りオムツを使用している老人は,すでにオムツそのものを身体の一部として取り込んでいるかのような状態にある.すなわち,彼らはなんら異和感を示さず,またそれを使用していることへの社会的通念や自尊心さえも失ってしまっているかのような状況にあり,懸命な働きかけにもかかわらず自立へと結びつくことは少ない.
このことは,早期対応のいかんによって,個人の人格や自己感覚までも狂わせてしまうという結果を引き起こしかねないことを示している.つまり,「意味・価値・規範」などによってコントロールされている発病前の日常生活における健康なすべての感覚が崩壊してしまわない時期に,麻痺症状やその他の随伴症状を有しながらも,患者自らが日常生活行為をマネージできる能力を体得させ,実行してゆけるような早期の対応が必要であることを示唆しているものと考えられる.
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